クリスマスイヴのその前の日に、もちろんオレたちはお祝いをするけども、ついでなのでなんだったらイヴもお祝いする。

昨日の料理が大量に残ってしまったので、ハイネルはそれをあたためなおしつつ、申し訳程度に酒のつまみを作っている。
昨日飲み過ぎて胃と頭の調子が悪いオレは、やはりかったるそうなハイネルの背中を、最近腰回りちょっと肉ついてきたんじゃねえのかな、と思いながらぼんやりながめていた。
「なーハイネル、オレまだ気持ち悪いからさ、今日は焼酎はいいよ……。なんかさ、ビールとかないの、や、もー水でいーよ……。うー、なんかまだ口ん中ねとねとするヨ……」
テーブルに並べられた鈍い色のビンを見やって、げんなりとつぶやくとハイネルは凄い勢いで振り返った。
「なななな、なんで泣いてるの……？」
「……テイエムオペラオーが……」
振り返りざま富江もパンツ一丁で逃げ出しそうな凄い形相で泣いてたと思ったら、また訳の分からないことを言ってる。
やっぱりジャパニーズsakeは後が良くないよな、と思いつつも、相手をしないと命が危ないのでちゃんと訊いてやる。
「勇者王ガオガイガーがどーしたって？」
「テイエムオペラオーだ！！あそこで大本命が来てどうする！競馬は夢を売るものではないのか！？こんな日に酒も飲まないとはどういう了見だグーデリアン！！」
「なに？毛羽立ちをおさえる新しいタイプの柔軟剤？」
「有馬記念だこのうすらとんかち！！それだからおまえはいつまでたっても中途半端な仮性包茎なんだ！！せめてステイゴールドだろう！！いや、メイショウドトウが来るのがドラマというものだ。まったくけしからん！！」
「なによアリマキネンって……。新種の粘菌の名前？」
「競馬だ競馬！！おまえ、そこまでシラを切るということは……まさかＪＲＡのまわしものか！？あんなイカサマ団体の肩を持つか！！松嶋奈々子か？松嶋奈々子なのか！？反町隆史気取りか！！」
「よくわかんないけど、馬ならオレが牧場ごと買ってやるから、たのむから静かにしてくれヨ……うげえ喉まで出てきた……」
「ええいそこまで根性が腐りきっておったとは！！そこへなおれ！！」
「乗りたいんならオレに乗っても良いからサ……」
泣きながら暴れ回るハイネルのうしろで、吹きこぼれているシチュー鍋の火を止めてやりながら、今夜は馬が一升瓶背負って頭上を走り回る夢を見そうだ、と思った。