ALKALIANGEL TYPE-II  
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ショートストーリー

恋人の無神経なはからいで鳴らないアラーム、ペースにのるきっかけをうしなって、それでも意地でシーツをおよぎでる、酸素のいきわたらないからだ。
なかなかこのましくない休日のすべりだし。

われながらあきれかえるきまじめさで、おくれをとりもどそうとニュースペイパーを読んだり、パスタをゆでたり、それもぜんぶ徒労におわるのが時計のくるった休日の常で。
結局、湯からあげられもしないリングイネと、バターをとかしただけでお払い箱のフライパン、天窓からのぞいていた日ざしもいつのまにか姿を消した。
トングをシンクにほうりだして、いきおい床にすわりこむ。インダルジェンス、とつぶやくこえが、まるで外国語のひびきで、かんがえてみればそれはりっぱな外国語なのだが、かんがえてみなくては気づかないのが問題なのであって、その問題の根深さと瑣末さに、非常ないきおいでからだから気がぬける。
マル・ドゥ・シエクル。
こんどは正真正銘の外国語だ。
……くだらない。
うごかないなら、うごかなくていいじゃないか。
よすがのようににぎりしめていたオリーブオイルの壜を、あっさりてばなして床にころがす。
ついでにやくたたずのからだも。
飴色の壜がダイニングテーブルの脚に出くわして、にぶい音をたてた。

で、弛緩している。
エントランスから直結、リビングダイニングのフローリングにぺたりと右頬をおしつけて、ぼんやり、からだと直角になげだした右手をながめては、あまりじぶんのものとおもえない。
のばしすぎで欠けたつめ。
深爪するほどみじかく切っても、見るまに成長していびつな姿をさらす。
みっともない。
キッチンもかたづけないでこのていたらく、さぞかし盛大に、同居人もあきれてくれることだろう。
つめに、それとも、他殺死体のように妙なアングルで弛緩した長いからだに?
ついに癲癇の発作で死んだかとあわてるか。
ああそんなことどうでもいい、夕食をつくらないと。
すこし頬を浮かせたが、弛緩しきったからだの、ゆびさきは依怙地だ。
めんどくさい。
ゆびさきにさしずされるからだ、のメカニズムはいかようなものか、統治権をうしなった脳は手持ちぶさたに空転をはじめる。
まあいいや。

−なに死んでんのそんなとこで。
−怠けてんの?いいねえ、でも毒殺されてるみたい。……具合でもわるい?
−ああわるいの。はいはい俺のせいねわかってますよ。でもせめてこっち向いたら、旦那がかえってきたんだからさ。
−つかれるって。そうですかそうですか。首1本の労力にも値しないわけですかあなたのチームのドライバーは。仕事を家庭に持ち込むな?……あんた誰?
−ごはん?いいよ食べにいこうよ。えなんでもいいよハイネルといっしょなら。できればね、もうちっとお口をつかってコミュニケーションとってほしいけどね。
−服、そのまんまでいいからついといで。車、あっちの赤いの出すから。
−……は?なんですかその手は。
−なに?だっこ?オバケかとおもったぜ。ウメラソヤーとか言うんだろニッポンのおばけ。
−うわぁー、なにその脱力っぷり。いくら軽いっても、重いんだからちっとは協力してよ。ほらここつかまって。……そこじゃないって。ベタだなー。
−重いよ、重くないはずがない。え、ベッドにつれてくときは燃料ちがうから。あでッ痛いよまたこんなにつめのばして。
−ああはいはい、行くよ行きますよ。行きゃあいんでしょ。
−さあお姫さまはなにをご所望ですか。

お姫さま、というにはだいぶとうもたちましたし、なによりお姫さまであったことなど、ついぞないというのがほんとうのところなのですが、こんなとき、このおおきなひとからそう呼んでもらえるのは、きっとわたしだけ、弛緩した甲斐もあったというもの。
やさしいてのひらがわたしでないすてきにあまいものをなでる、そのときまではうぶ毛のひかるくびすじに、この欠けやすいつめでかじりついておきましょうか。

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