ALKALIANGEL TYPE-II  
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ショートストーリー

どこへ行くにも送迎車だった、おまえのかんがえてるとおりね、わたしは『おぼっちゃん』だったから。ああ、ご期待に添えなくて申しわけないが、リムジンじゃない。

だからね、地下鉄に乗りたくてしかたなかったよ。乗りたいとおもったら、もう乗らないでは気がすまなくてね、……そんな顔でわらわなくてもいい、聞き分けのないこどものやることだ。
まあどうにか、おとなたちをまいてね。こどもにとってはおとななんて、みんなアニメの悪役みたいなものだから、それだけでちょっとしたヒーロー気取りさ。

チケットを買って、なるたけなんでもないふうにゲートをとおって。
シートにすわったときには、もう有頂天だった。
チケットを入れたポケットを、意味もなくぎゅっとにぎってね。
ふと見ると、向かいの席におなじ年ごろの男の子がすわってたんだ。
はっきり言って、きたない身なりの子でね。だいじそうになにか袋をかかえてた。
なんだかすこし気になって、ちらちら見てると袋から工具セットを、まあこどものおもちゃみたいなものだが、取りだして座席にひろげはじめたんだな。
それから、じぶんのかけてるメガネをはずしてね、ドライバで分解しはじめた。
で、バラバラに分解したメガネを、こんどはもとどおり組み立てるんだ。
ずっとそのくりかえしさ。
わたしはずっと見てた。
ほんとうにたのしそうでね、その子の顔ときたら。
それまでのうかれたきもちが、一気にしぼんでくのがわかったよ。
くやしかったんだ。
なんだかじぶんが、ものすごくつまらない人間におもえてね。
負けたな、っておもった。
だからそれからは、経営じゃなくて技術を学んだ。
最高の環境で、最新の技術をね。
でもそんなことじゃ消えないんだ、あのかんじは。どうにも追いつけない、いつも負けてるかんじだよ。
ささいなことだけどね、そんなおもいがずっと消えなくて、なにをどうがむしゃらにやっても消えなくて、いまでもあの男の子になりたいとおもうことがある。意味のないことだがね。
今ならわたしをこどもみたいという人間もいるだろうね。
それはわたしがこどもみたいでいたいからだ。
ほんとうにこどもでいられる人間は、とてもすくないよ。
おまえはどうだろうな。

え?ああ、もちろんすぐにつかまったさ、みじかい冒険譚だ。
まあそれだけだ。とくに意味はない。

*  *

「それだけ?」
「それだけ。」
「いまでもじぶんが嫌い?」
「それなりにね。」
「俺はそんなふうに無理ばっかり言ってるおまえが好きだけどね」
「そうかな。」

それじゃおやすみ、良い夢を。

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